フリーランス新法、発注担当者に閉じるリスクと対策

2024年11月施行のフリーランス新法で発注事業者に課された義務と、取引条件の明示やハラスメント相談対応の経緯が担当者一人に閉じてしまうリスク、その備え方を整理して解説します。

「あの案件、条件はチャットで伝えたはずだけど、いつ誰が何と言ったか担当者しか覚えていない」――フリーランスへの発注が増える中小企業で、こうした状態のままフリーランス新法への対応を担当者任せにしていないでしょうか。本記事では、法律が発注事業者に求める義務の全体像と、対応の経緯が特定の担当者に閉じてしまう構造的なリスク、その備え方を整理します。

フリーランス新法とは何を義務付けているか(結論)

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法、通称フリーランス新法)は2024年11月1日に施行されました。個人で業務委託を受けるフリーランスと発注事業者との取引を適正化し、フリーランスの就業環境を整備することが目的です。義務は契約期間に応じて3段階になっています。

対象となる業務委託 発注事業者に課される主な義務
すべての業務委託 取引条件の明示(書面またはメール・チャット等の電磁的方法。フリーランスから書面を求められたら遅滞なく交付)/報酬の支払期日設定(給付受領日から60日以内のできる限り早い日)と期日内支払/募集情報の的確表示
1ヶ月以上の業務委託 受領拒否・報酬減額・返品など7つの禁止行為の遵守
6ヶ月以上の業務委託 育児介護等への配慮義務/ハラスメント相談体制の整備/中途解除・不更新の30日前予告と理由開示

公正取引委員会は施行後の2025年3月、取引条件の明示義務違反などを理由にアニメーション制作業やゲームソフトウエア業など45社を指導したと発表しました。同年6月には出版社2社への勧告が初めて行われ、2026年2月末までに勧告は8件に上っています。命令に従わない場合は50万円以下の罰金の対象にもなり得るため、規模の大小を問わず対応が必要な法律です。

「担当者の頭の中」に義務対応の記録が閉じてしまう実態

この法律で厄介なのは、義務の対応状況が発注担当者の個人チャットに閉じやすいことです。フリーランスとのやり取りは口頭やメール、チャットで進むことが多く、条件明示の内容も、育児・介護への配慮を求められた経緯も、ハラスメント相談を受けた記録も、多くの場合担当者一人のトーク画面の中にしか残りません。

たとえば次のような状況は、決して珍しくありません。

  • 発注担当者が異動・退職し、後任がその業務委託がいつから続いているか(6ヶ月を超えているか)を正確に把握できない
  • フリーランスから「体調に配慮してほしい」と相談があったが、担当者の記憶頼りで社内の他の誰も経緯を知らない
  • 契約を中途解除する際、30日前の予告が必要な期間に該当するかどうかを判断する材料(発注日・更新履歴)がすぐに出てこない

契約審査が遅れる理由が判断の難しさよりも過去の取引経緯を探す手間にあるという課題と、構造はよく似ています。相手ごとのやり取りの経緯が個人に閉じることそのものが、義務の見落としや対応漏れの土台になっているのです。

一般的な対策の考え方

専門家が挙げる対策の方向性は共通しています。

  1. 発注ルールの文書化: 「口頭・チャットでの発注でも取引条件を明示する」ことをテンプレート化し、担当者の裁量に委ねない
  2. 契約期間の可視化: 1ヶ月・6ヶ月の節目で義務が増えるため、いつから継続しているかを組織として管理する
  3. 相談窓口の周知: ハラスメント相談窓口を用意するだけでなく、フリーランス側に「誰に・どこに」相談すればよいか周知する
  4. 定期的な棚卸し: 発注担当者一人に依存せず、進行中の業務委託を定期的に確認する機会を設ける

同じような「担当者交代で経緯が引き継がれない」構造は業種を問わず起きており、たとえば非常勤講師が入れ替わる学習塾での生徒ごとのやり取りが担当講師の頭の中にしか残らない課題や、訪問看護での利用者ごとの情報共有が担当者任せになる課題でも、対策の考え方は「特定の個人に閉じさせず、組織として見える状態を保つ」という点で共通しています。

なお、取引条件明示の様式づくりや、禁止行為への該当性、育児介護配慮の具体的な内容判断は法律の専門知識が必要な領域です。実際の対応は弁護士や社会保険労務士などの専門家、または国が設置する「フリーランス・トラブル110番」等の相談窓口に確認しながら進めることをおすすめします。

HACHでできること、できないこと

HACHは、Slack / Teams / Chatwork に招待するだけで使える常駐型AIスタッフです。365日24時間稼働し、チャットやメールのやり取りを自動収集して、毎朝レポートやダッシュボードとして届けます。発注担当者とフリーランスとのやり取りが個人のトーク画面だけに残るのではなく、組織として日々の動きを把握できる状態に近づけることは、HACHが確認済みの機能の範囲でも貢献できる部分です。推論時には機密情報を自動マスキングし、データはAWS内で完結する設計のため、フリーランスの個人情報を含むやり取りを扱う場面でも安心して導入を検討しやすい点も特徴です。

一方で、はっきりさせておきたいのは、HACHが取引条件明示書面の作成を代行したり、禁止行為への該当性やハラスメントの認定、育児介護配慮の具体的内容を判断したりする機能は持たない、という点です。HACHの役割はあくまでチャット等のやり取りを収集・整理して共有することが中心であり、フリーランス新法そのものへの対応(明示書式の整備や相談体制の設計)は、弁護士や社会保険労務士など専門家への相談を前提に進めてください。

まとめ

  • フリーランス新法は契約期間に応じて義務が段階的に増え、施行後すでに複数の勧告・指導事例が出ている
  • 対応の経緯が発注担当者一人のチャットや記憶に閉じることが、義務の見落としの土台になりやすい
  • HACHは既存チャットに招待するだけでやり取りを自動収集・毎朝レポート化できるが、法的判断そのものは専門家への相談が前提

社内のフリーランス発注の実態を、担当者任せにせず組織として把握できる状態に近づけたい方は、まずは無料相談で自社に合う進め方を確認してみてください。

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